京都府立医科大学神経内科は、神経内科、老年内科、脳卒中診療科領域の疾患の診療・教育・研究に全力で取り組んでいます。

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年報 2018年度 巻頭言
年報 2018年度 巻頭言
京都府立医科大学 神経内科学教室 教授 水野 敏樹
一昨年大学は日本医学教育機構による医学教育分野別評価を受審し、昨年は大学改革支援・学位授与機構による大学機関別認証評価を受審、それぞれの機構から本学は評価基準を満たしていることを認定された。病院は病院で、病院機能評価を繰り返し受審しなければならないこともあり、“今度は大学かーー”という気持ちも半分だったが、二つの受審を通して、自己評価をまずなさねばならず、改めて本学で行う医学教育はどうするべきかを強く考えさせられた。

まず本学の理念である“世界トップレベルの医学を地域へ”である。この言葉は藤田哲也元学長が作られたと聞いているが、このポリシーは本学の建学以来脈々と流れている素晴らしい理念であり、また私達に課せられた大きな使命であることを改めて思う。このポリシーは医学部医学科のみならず、大学院医学研究科、附属病院すべてに取り入れられ、他に類を見ない明確な理念である。実際建学時当時最新であったヨーロッパ医学を、ドイツ人医師ヨンケルを招くことで京都療病院が開かれ診療が始まると共に、解剖学・外科学・内科学・精神医学を教えた。ヨンケルが発明したクロロホルムを気化する麻酔器を用いて手術も行ったと言われている。この麻酔法は彼が来日する4年前、1868年鳥羽伏見の戦いで有名になった。刀ではなく、銃砲による戦傷者を助ける方法は漢方医学では不可能で、鎮痛が十分で可逆性のある麻酔技術は当時最先端の医療技術だった。まして四肢の切断法は大きなカルチャーショックを与えた医療技術であった。この世界トップレベルの医療が府立医科大学の前身“粟田口の療病院”で始まり、教えられたのです。当然多くの若者がこの最先端の学びたいと思ったのは当然であろう。

この理念実現のためには、私達教員が世界最先端の医療を学べる大学、病院を運営すること、学生はそれにふさわしい学力とともにその医学を地域へ還元できる医師になることが求められる。そして教員には世界最先端の研究結果・治療法の創出、その研究に向う大学院生を育てること、学生には学位を授与される時にはその資質が備わることが求められる。ではこの理念を実現できる医学教育、大学院教育ができているか、そのための施設やカリキュラムは十分かと? 大学や病院の施設、教員の数・働く時間、限られた予算など挙げればきりがないほど現実は厳しい面も多い。それを精神面だけで頑張れと言われても、多くの教員も学生から“やってられない”という返事が返ってきそうである。しかしこれまでの本学の状況が、恵まれていたから良い仕事ができてきたかと言われれば必ずしもそうとうは言えない。消化器内視鏡で世界的に名をはせた本学名誉教授の川井啓市先生も私が入学したころまだ残っていた古い昭和初期の病棟の小さな一室で最新のERCPの技術を開発され、海外から来られた見学者が“この場所で!”と驚かれたと聞く。残念ながら京都市内の大変便利な場所に位置する本学は場所を拡張することが難しい。精神論を説くつもりはないが、やはり大事なのは限られた場所・時間の中でもどうやって教育するか、育てていくかが問題なのである。

Diploma policyの大事なポイント、“どのような医師を育てるのか?”は大きなテーマである。これは医学生の時点、研修医の時点、教室へ入ってきた時点、専門医をとる時点、大学院生の時点、とすべての時に共通して、どのような医師を目標とするかは常に問われる。それぞれの時点で到達すべき診断力・医療技術は異なるが、共通しているのはコミュニケーション能力、倫理性などいくつか挙げられるが、私は医師としてのプロフェッショナリズムだと考えている。医学生にプロフェッショナリズムを問うと、プロスポーツ選手のようなお金を稼ぐことや、パティシエのような技術をイメージする。しかし医師としてのプロフェッショナリズムは全く異なるのである。医師は人にメスを入れること、薬を処方することが法律で許されている。これは人を傷つけても、それが最終的には治療に繋がるから許されている診療行為である。外科では手術であり、内科では薬を処方することである。これを医師でない人間が行えば、処罰される。とすれば、その自分が行う医療行為に大きな責任が生じる。医療行為を行うためには、当然自分の行う行為をまず良く知らねばならず、準備をせねばならず、説明せねばならず、安全に行わねばならない。医師が常に学びながら医療行為を行わねばならないのは、法律で許される行為を行うためには当然のことなのである。医師、そして教育者でもある私達は、学生・大学院生・研修医・専門医を育てていくため、決して忘れてはいけないであろう。

ここまでを書いていたら、3月になってから医師国家試験での成績が過去最悪というニュースが流れてきた。学部学生卒業の時点で必要な学力が伴っていないことを突き付けられた形である。3月から教育委員会、教授会とこの対策で既に皆が熱くなる会議を何度も繰り返し、時をおかずに、対策を行おうとしている。学生にもdiploma policyを植え付け、到達すべき目標をしっかり意識して、来年3月までに到達させたいと思う。
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